大判例

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東京地方裁判所 昭和44年(ワ)14266号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕佳津恵が死亡当時満七歳の女子であることは前示事実と弁論の全趣旨により明らかであり、その統計上の平均余命が六七、五五年であることは当裁判所に顕著である。

ところで、かような年少者の死亡に基づく逸失利益と呼ばれる損害は、その者が死亡直前に抽象的に帯有する稼働能力の喪失自体を意味するものと解すべきであり、従つてその算定のために設定する将来の稼働期間、収入額、生活費等は、右損害の評価のための過程にすぎないのであるから、これらの点に関する原告の主張の個々はいわゆる狭義の弁論主義に関しないものとして、裁判所を拘束しないと解すべきである。そしてまた、右抽象的稼働能力の算定に当つては、その者が将来稼働すべかりし時期までに要する養育費は、稼働能力取得のための必要経費として控除すべきものであり、その控除後の数額が即ち死亡直前の抽象的稼働能力の評価額と解すべく、しかも右もまたその評価過程にすぎないから、当事者の主張を待つ必要はなく、そして右控除後の数額が原告主張の逸失利益額を超えない限り、狭義の弁論主義の問題は生じないと解すべきものである。

そこで佳津恵の逸失利益額を算定するに、労働大臣官房労働統計調査部編昭和四三年賃金構造基本統計調査報告第一巻第一表「産業、企業規模、労働者の種類、性、学歴および年令階級別常用労働者の平均年令、平均勤続年数、平均月間実労働時間数、平均月間きまつて支給する現金給与額、平均月間所定内給与額、平均年間賞与その他の特別給与額および労働者数」によれば、女子労働者全産業平均の平均月間きまつて支給する現金給与額は金二万五八〇〇円、平均年間賞与その他の特別給与額は金五万八七〇〇円であり、通常の稼働期間とみるべき亡佳津恵の死亡後一三年を経た二〇歳時から五三年後の六〇歳時まで右の年間平均給与賞与合計金三六万八三〇〇円の収入を得るものとし、うち二分の一を生活費として控除し、これを死亡時の現価に換算するため年毎にホフマン式計算により年五分の中間利息を控除して合算し、更に右稼働開始に至るまでの一三年間に要する養育費としては、月額五〇〇〇円、年額六万円をもつて相当と解されるから、これについても年毎にホフマン式計算によつて年五分の中間利息を控除して合算し、これを右金額から控除すると、左の計算式のとおり金二三〇万四五〇一円となり、右をもつて佳津恵の前記逸失利益の相当評価額と解すべきである。

60,000×9,82117=589,270

2,895,771-589,270=2,304,501

しかるところ、同人の前記過失を斟酌すると、このうち賠償額として金一六六万円を認めるのが相当である。

原告らが佳津恵の両親であることは当事者間に争いがないから、同人の死亡により、同人の右逸失利益の損害賠償請求権を各二分一の金八三万円宛相続により取得したこととなる。(浜崎恭生)

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